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The Complete Recordings, Vol. 1

ブルース / クラシック・ブルースと女性の先駆者 · 1923–24

The Complete Recordings, Vol. 1

ベッシー・スミス

The Complete Recordings, Vol. 1 · Bessie Smith

この一枚を聴く理由

歌の一節が終わると、ピアノが短く応える。その間を追うだけでも、古い録音の向こうに一人の歌い手が近づいてきます。

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収録曲・試聴

日本語編集版

アルバムの物語

最初の「Down Hearted Blues」は、歌とピアノの間に耳を置いてみてください。ベッシー・スミスが言葉を届け、そのあとに鍵盤が動き、また声が戻ります。現代の録音のような低音や広がりを期待すると戸惑うかもしれません。それでも、一つの文を最後まで聴かせる声の存在感は別の楽しみです。英語の意味を全部つかもうとする前に、どこで声が止まり、何がその余白を受け取るかを追う。そんな聴き方から始められます。古い音だから遠い人の歌だ、と決めなくてもよいのです。

これは1923〜24年の初期録音をまとめた後年の編集盤です。案内しているソニーの配信版は1991年表記で、二枚組、全38曲。録音の時代と、この形でまとめられた年は区別しましょう。当時この題名の長編アルバムが制作されたわけではありません。また、Vol. 1は全集の第一巻を示し、一冊分で全生涯の録音がそろうという意味でもありません。現代のアルバムと同じように、全曲を一つの物語として続けて聴く必要はありません。

悲しい歌にも前へ進む力がある

ブルースを沈んだ気分だけの音楽と思っていると、この声の押し出しは意外に感じられるかもしれません。つらい話をしていても、文末をはっきり届け、次の言葉を待たせます。似た表現が戻るとき、同じ強さで歌っているか、少し違う重みをつけているか。内容の解釈とは別に、語り手が話の主導権を保つ感じを楽しめます。ただし、歌の人物と歌手本人の生活をそのまま重ねる必要はありません。

資料になる前は、人を楽しませる歌だった

米国国立公園局は、スミスの初期レコードの成功と巡業の人気を紹介しています。現在は歴史的な録音として聴いても、最初から保存のためだけに歌われたものではありません。短い時間で客の耳をつかむ歌い手が、レコードでも聴き手に出会ったのです。その人気を現在のチャート順位に置き換えたり、日本でも同じ反応だったと広げたりはできません。まず一曲の中の表情の変化を追えば、資料としての距離は少し縮まります。

三十八曲を一度に覚えなくてもよい

最初は冒頭の二曲だけでも十分です。次には気になる題名を一つ選び、声の文の長さや伴奏の動きを比べてみましょう。音質が似ていて違いが分かりにくければ、短く区切るほうが聴きやすいこともあります。全部を等しく好きになる必要はありません。もう一度聴きたい一曲ができれば、全集という大きな名前も個人的な楽しみに変わります。知識を増やすだけでなく、自分ならどの歌に戻るかを選べるところが、この編集盤を手元に置く面白さです。

曲からたどるアルバム

冒頭の二曲を聴き、あとは数曲ずつ。初期録音の年代と1991年の編集盤という二つの時間を分けて考えましょう。

  1. Down Hearted Blues (78rpm Version)

    歌が一節を言い終えたあと、ピアノがどう動くかに注目してみてください。つらい内容と、動き続ける伴奏の軽さは同じ感情だけを示してはいません。曲を書いたのはアルバータ・ハンターとロヴィー・オースティンで、スミス自身の新作ではありません。この1923年の録音は、2002年に米国議会図書館の保存対象に選ばれました。発売当時に受けた賞とは区別が必要です。その評価をいったん脇に置き、語り手が傷つきながらも話す力を失っていないように聴こえるか、考えてみましょう。一度で答えを決めなくても、同じ一節に戻ると別の重みが感じられるかもしれません。

    参考資料 · Cary O’Dell, Library of Congress: Down Hearted Blues, Registry essay
  2. Gulf Coast Blues

    有名な一曲目の次で止めず、声が文を閉じる感じを比べてみてください。米国国立公園局によれば、前曲とこの曲は1923年2月、クラレンス・ウィリアムスのピアノで録音されました。大きな楽団ではなく、歌と鍵盤のやりとりを追える場面です。声が休んだときにピアノがどれだけ動くか、次の言葉までどんな間があるか。英語に自信がなくても聴けるところがあります。同じ歌手と伴奏者でも、二曲の会話の呼吸まで同じとは限りません。どちらが心に残るかを選ぶだけでも、歴史的名盤を義務で聴く感覚から離れられます。好きなほうをもう一度聴いてから、全集の先へ進んでもよいのです。

    参考資料 · National Park Service: Bessie Smith, early recordings and stage career

次に聴く一枚

次はマ・レイニーへ。同時代の女性ブルース歌手という名前でひとまとめにせず、言葉の重さや声と伴奏の間隔を比べてみてください。

Mother of the Blues ↗
参考資料と編集について

日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。