ヒップホップ / 黎明期とオールドスクール · 1986
Licensed to Ill
ビースティ・ボーイズ
Licensed to Ill · Beastie Boys
この一枚を聴く理由
三人の声が言葉を受け渡すと、一つの文が集団の動きになります。大きなギターの音だけでなく、声が入る隙間へ耳を向けてください。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
「The New Style」で、誰が言葉を始め、誰が終わりを受け取るか追ってみましょう。すべての英語を訳す前に、交代そのものを拍子として楽しめます。ビースティ・ボーイズの最初のアルバムは、ロックの重い響きとラップの言葉のやり取りを同じ場所へ置きます。一人の名文を探すより、三人が一緒に音を押し出す瞬間を見つけると近づきやすくなります。
1986年発売の《Licensed to Ill》は、リック・ルービンとビースティ・ボーイズの制作です。案内する配信版は全13曲で、ロックの殿堂図書館が所蔵するCDの目録と曲順が一致します。2016年にユニバーサルが告知した30周年LPも同じ構成ですが、そのアナログ盤の制作マスターについての説明を、現在の配信音源にもそのまま当てはめることはできません。
声がもう一つの打楽器になる
「Rhymin’ & Stealin’」から「The New Style」へ進み、短い掛け声と一人が長く話す部分を比べてください。伴奏が繰り返していても、声の出発する位置が変われば次の拍への期待も変わります。ラップの速さだけを技術の物差しにしなくてもよいのです。声が重なるところだけでなく、空白のあとで戻るところにも勢いがあります。同じ言葉を理解する場合でも、誰がどの場所で言うかによって印象が違うことを確かめられます。
ギターの強さだけでまとめない
「Fight for Your Right」と「No Sleep Till Brooklyn」の印象を覚えたまま、「Paul Revere」へ進んでみましょう。Appleの回顧的な紹介は、逆向きに動くようなビートを取り上げています。全部を同じロックとラップの混合として片づけず、声の周囲に残る場所を比べると面白くなります。「Hold It Now, Hit It」や「Brass Monkey」でも、短い音と声の組み合わせを続けて追えます。
ヒットの記録と現在の耳
ユニバーサルの回顧によれば、本作はヒップホップのアルバムとして初めてBillboard 200の首位に立ちました。2015年の米国ダイアモンド認定は、後年まで積み重なった売上の記録です。一方、Appleの評価は、粗野な言葉や侮蔑的な表現が時代に耐えなかった点にも触れています。音の勢いにひかれることと、すべての冗談に同意することは別です。誇張された人物たちの騒ぎを聴きながら、いまの自分には距離を感じる箇所があっても構いません。成功の数字を感想の正解にせず、声と伴奏の関係へ戻ってみてください。
曲からたどるアルバム
The New Styleで声の交代を追い、Paul Revereでは伴奏が残す空間を比べてみてください。
The New Style
最初は誰が言葉を始め、誰が後ろを受け取るかだけに集中してみましょう。同じ伴奏でも声が加わると、急に場所が狭くなったように感じられます。次には一緒に叫ぶ部分と、一人の声が前に出る部分を比べてください。人数が増えれば音量が増す、というだけではありません。隙間があるから次の登場が大きく聞こえる場合もあります。この版では二曲目なので、冒頭の重い印象との比較にも向いています。伴奏をただの背景へ追いやらず、声が限られた拍の中をどう分け合うか聴くと、掛け声もリズムの新しい断片になります。一人を主役と決めるより、注意を次の声へ渡していく楽しさがあります。
参考資料 · Apple Music: Licensed to Ill, thirteen-track edition and retrospectivePaul Revere
八曲目の強いギターからここへ来ると、声の下にある床が変わったように感じられるでしょうか。Appleが注目する逆向きのビートは、制作方法を正確に再現できなくても楽しめます。一節のあとに残る音の形を覚え、次の声がそれをどう使うか聴いてください。物語は誇張された冒険談のようで、グループの実際の来歴を記録した証言として読む必要はありません。先へ走る言葉と拍を待つような言葉の違いを追えば、全訳なしでも動きが見えてきます。二度目は声ではなく反復する伴奏へ注意を移し、同じ句の重さが変わるか確かめましょう。音作りが話し方にも関わることを発見できる曲です。
参考資料 · Apple Music: Licensed to Ill, thirteen-track edition and retrospective
次に聴く一枚
Run-D.M.C.のRaising Hellへ進み、複数の声とロックの響きが出会う別の形を比べられます。
Raising Hell ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。