日本の音楽 / フォーク・シンガーソングライター · 1973
ひこうき雲
荒井由実
この一枚を聴く理由
淡々とした声のそばで、ピアノやバンドが景色を変える。映画から表題曲を知った人にも、1973年の一枚へ戻って聴いてほしい作品です。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
『ひこうき雲』の声は、感情を大きく言い切るより、目の前の景色を見つめているようです。その周囲でピアノやバンドが動き、短い言葉にも光や天気が生まれます。表題曲の印象は強いのですが、通して聴くと、軽やかさや冷たさも違う割合で混ざっています。
荒井由実が1973年に発表したファースト・アルバム。のちに松任谷由実として知られる歩みの出発点ですが、その後の大きな存在感から逆算して聴く必要はありません。すっと覚えられるメロディと、その印象を少し揺らす伴奏。親しみやすい歌の形なのに、気持ちは一言で収まらない。その組み合わせを、まず音の経験として受け取れます。
声は近く、伴奏は広く
シンガーソングライターという言葉から、ひとりで歌う姿を想像するかもしれません。でもこの作品では、声の周囲の演奏が大切な聴き場所です。歌い手が淡々としている間に、伴奏が先に気分を変える。旋律が終わっても、楽器の響きが場面を続ける。その距離の調節に、今回選ぶ音楽的な理由があります。強く歌い上げることだけが感情の表現ではありません。抑えた声のそばに何を置くかによって、歌がどれだけ広がるかを味わえます。
表題曲の印象から、隣の曲へ
「ひこうき雲」を知っていると、アルバム全体にも同じ悲しさを求めたくなるかもしれません。しかし「きっと言える」には別の軽やかさがあり、「ベルベット・イースター」には違う空気と待つ時間があります。知っているサビを探すより、曲が替わる場所を続けて聴いてみてください。声そのものは同じでも、周囲の景色が変わります。曲を書く人の個性は、声の魅力だけでは説明しきれない。そのことを、難しい理論を使わずに感じられる並びです。
映画を通って、元のアルバムへ
表題曲は発売から40年後、2013年の映画『風立ちぬ』の主題歌になり、レーベルも記念盤を紹介しました。古い曲に新しい聴き手が出会う、具体的な道筋です。映画の場面を思い出しながら聴く楽しみもありますが、もともとその映画のために作られた一枚ではありません。元の曲順へ戻ると、よく知る歌の周囲にあった別の歌が見えてきます。一曲への好意が一枚への関心に変わる。その体験を、ユーミンを以前から知っている人にも、初めて名前を覚える人にも勧めたいところです。最初は声に気を取られても、二度目にはピアノの響きへ注意を移してみてください。同じ歌詞でも、周囲の音が聞こえてくると受け取り方が変わります。映画の記憶から少し離れ、一枚の中の別の曲にもその耳を向けることができます。
曲からたどるアルバム
声より先に伴奏が気分を変える瞬間へ。映画の記憶がある人も、一度は曲順の中で聴いてみてください。
ひこうき雲
ピアノと声が近くにある始まりでは、言葉を歌い出すこと自体へ耳が向きます。旋律が高く広がっても、感情は単純な慰めや明るさにはまとまりません。2013年の『風立ちぬ』の主題歌として、別の世代にも届いた曲です。映画を知っているなら、映像なしで聴いたときに何が残るかを確かめてみてください。知らなくても、理解の準備は必要ありません。一節が終わったあとに楽器が残す時間を追うと、説明しきれない余韻に近づけます。1973年の録音と後年の映画での使用を分けて考えることで、古い歌が新しい物語と出会う面白さも見えてきます。
参考資料 · Universal Music: 40th anniversary editionベルベット・イースター
表題曲の大きな余韻とは別の、少し低い場所から天気と気持ちを見つめるような歌です。ピアノと声を一緒に追うと、美しい旋律が必ずしも明るい気分だけを運ばないことに気づきます。映画の主題歌からこの一枚へ来た人には、よい二つ目の入口でしょう。同じ歌い手が、別の場面でも自分の世界を作れることがわかります。大きな盛り上がりを待つより、冒頭の気分が最後までどう残るかを聴いてみてください。一曲の知名度では見えなかった幅が現れ、元のアルバムを通して聴く意味が、少し具体的になります。表題曲との違いも、声とピアノの距離から聴き比べられます。
参考資料 · Universal Music: 40th anniversary edition
次に聴く一枚
声の周囲のアレンジが気になったら、山下達郎『FOR YOU』で、よりリズムを軸にした組み立てを聴いてみてください。
FOR YOU ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。