ポップ / シンガーソングライター・ポップ · 1978
52nd Street
ビリー・ジョエル
52nd Street · Billy Joel
この一枚を聴く理由
歌の明快さを保ちながら、楽器と声の距離を次々に変えていく九曲。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
勢いよく押し出すBig Shotから、ゆっくり耳を近づけたくなるHonestyへ。この移り変わりだけで、ビリー・ジョエルが一枚の中に複数の表情を置いていることが分かる。ピアノは中心に残るが、声の態度と周りの楽器が変わるたびに、曲がこちらへ語りかける距離も変わっていく。
一九七八年発表、制作はフィル・ラモーン。公式サイトの後年の回想によれば、録音はその年の夏、ニューヨークのA&Rで行われた。この場所は作品の背景を知る手がかりになるが、歌の主人公をすべて本人の日記として読む必要はない。強気な語りと弱さを見せる語りを、別々の演技として受け止めてもよい。街を題材にした一つの物語を探すより、曲ごとの場面転換を味わいたい。
最初の面を最後まで
冒頭の二曲にMy Lifeが続き、Zanzibarへ進む。短く明快な歌に親しんだ耳が、次第に楽器の動きにも引き寄せられる並びだ。オリジナルLPではZanzibarが第一面の最後に置かれていた。知っているサビを聴いたところで次へ飛ばさず、声が退いた後にも留まってみよう。歌が道を示す時間と、楽器がその周囲を広げる時間の違いが、面の終わりに一つの余韻を作る。
名前よりも受け渡しを
Zanzibarのトランペットにはフレディ・ハバードがクレジットされている。またマイク・マイニエリは同曲とRosalinda’s Eyesに参加した鍵盤打楽器奏者だ。ただし、ゲストの名を理由に作品全体をジャズと分類し直す必要はない。戻ってくるメロディやサビが道標になる間に、別の楽器が空間の形を変える。歌手を追っていた耳がいつのまにか伴奏へ向く、その受け渡しを楽しめばよい。
大きな場面の後に
後半ではStilettoの区切られた動き、Rosalinda’s Eyesの柔らかな揺れ、Half a Mile Awayの活気が、長いUntil the Nightへつながる。その大きな表現を終えた後にも短いタイトル曲が残る。最も強い場面で幕を下ろさず、一度小さな身振りへ戻る構成だ。最後の二曲を組にして聴けば、長さの違いも曲順の働きになる。改めて冒頭へ戻り、各曲がどれほど近く、あるいは遠くから話しかけてくるかを比べてみよう。同じ声とピアノでも、関係の作り方は一つではない。ヒット曲の記憶だけでは捉えにくい、九曲を通した変化がそこから見えてくる。曲の間で少し立ち止まり、直前の声の調子を思い出してから次を聴くのもよい。全体を一つの気分にまとめないことで、それぞれの輪郭がかえってはっきりする。
曲からたどるアルバム
最初の四曲を続け、最後のUntil the Nightとタイトル曲の大きさの違いを聴く。
Zanzibar
サビが進む道を教えた後、楽器の声がその場所を引き継ぐところに注目したい。トランペットのクレジットはフレディ・ハバードで、楽器を持つジョエルのジャケット写真を演奏担当と混同しないようにしよう。一度は歌が戻る位置を目印にし、次はその間のリズムの動きを追ってみる。独奏を別の見せ場として切り離すより、それを通った後で歌の戻りをどう待つかに耳を向けると面白い。原盤では第一面を閉じる曲だった。最後まで楽器と一緒に留まることで、曲の終わりが盤の途中の休止にもなる。ゲストの経歴を知らなくても、声と楽器の受け渡しだけで十分にたどれる曲だ。
参考資料 · Apple Music:original nine-song studio programmeUntil the Night
静かに語り始める声から、編曲が大きく広がるところまでの距離を聴いてみよう。長い曲というだけでなく、感情を一度に出し切らず、時間をかけて大きくする演奏として受け止めたい。一度目は声の強弱を、二度目はその後ろに加わる響きの厚みを追うと、同じ箇所でも耳の向きが変わる。原盤でもこの次には短いタイトル曲が続く。したがって、ここをアルバム最後の結論として止めず、その先まで聴くのがおすすめだ。大きな場面の後で身振りが小さくなると、終わり方にも別の表情が生まれる。盛り上がる瞬間だけでなく、そこへ至る時間と、そこから離れる時間をまとめて味わいたい。
参考資料 · Apple Music:original nine-song studio programme
次に聴く一枚
同時期のポップの編曲を、pop-18とも比べてみたい。
Excitable Boy ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。
- Billy Joel official discography:52nd Street,1978,nine songs · www.billyjoel.com
- Billy Joel official:2012 retrospective on A&R and cover photograph · www.billyjoel.com
- Original1978 liner notes transcription:FC35609 credits and LP sides · albumlinernotes.com
- Apple Music:original nine-song studio programme · music.apple.com