レゲエ・ラテン / アフロビートと西アフリカ · 1999
Black Voices
Tony Allen
この一枚を聴く理由
演奏するドラマーと音を組み替える制作者、それぞれの判断が交差する作品。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
冒頭のAsikoは約8分。それが後半に入ると9分を超える別のミックスとして帰ってくる。表題曲も長さの異なる二つの姿を持つ。トニー・アレンのBlack Voicesでは、新しい曲へ進むだけでなく、一度出会った素材を別の場所から見直すことがアルバムの構成になっている。
1999年に発表されたこの作品を、名ドラマーの独演集として紹介するのは適切ではない。制作を担うDoctor Lの電子的な処理が大きな役割を果たし、著作クレジットにはMichael Clip PayneとGary Mudbone Cooperの名もある。フェラ・クティと築いたアフロビートの歴史を背景に持ちながら、ここでは録音を誰がどう仕上げるのかという、別の関係が前に出ている。
回想に残った摩擦
後年のインタビューでアレンは、自分が普通に録音した演奏をDoctor Lが音の面で変形させたと話している。その制作を嫌っていたという言葉と、米国でのツアーにつながったという話が同時に出てくる点が興味深い。全員が最初から同じ未来像を共有した成功物語に整える必要はない。演奏者の意図と制作者の判断が一致しないことも含めて、この音盤の個性なのだ。
六つの位置と二度の登場
Asikoの次には、比較的短いGet Togetherが置かれる。長いBlack VoicesとThe Same Bloodを経て、AsikoがIn a Silent Mixとして再登場し、短いほうの表題曲で元の六曲構成は閉じる。同じ曲名が並ぶのは登録の重複ではない。順序を保って聴けば、後半が前半の記憶を呼び戻す設計として働く。再生時間の差を入口にして、各版の始まり方と終わり方を比べてみたい。 途中の曲を飛ばさずに聴けば、再登場までにどれだけ別の音楽を通ったかも感覚に残る。短い抜粋だけでは、この時間の隔たりは分からない。曲単位の試聴で入口をつかんだ後、可能ならアルバムの順序そのものを聴く対象にしてほしい。
英雄一人に集約しない
この作品の面白さは、アフロビートを一人の発明品にすることではない。身体から生まれた演奏が、制作の過程を通って別の輪郭を持つところにある。アレンの回想を読んでから聴くと、音の加工を演奏への裏切りとも無条件の進歩とも決めつけずに済む。今回の提供版に加わるAriyaはボーナスとして扱い、まず六曲目までの流れを確かめよう。別企画のRevisitedと行き来する場合も、同じ題名だから同じ編集だと思わないことが大切だ。
曲からたどるアルバム
1曲目と5曲目を比較し、6曲目で元のプログラムが閉じる感覚を確かめる。
Asiko
選んだのは約7分55秒の冒頭版。ドラマーの名前から独奏の見せ場を待つより、打音が周囲の音とどう並ぶのかに注意を向けたい。ひと通り聴いてから5曲目のIn a Silent Mixへ進むと、同じ題名でも置かれた場所と長さが異なることが分かる。後者は約1分半長く、その差は比較の出発点になる。ただし長さだけで加工内容を説明することはできない。まず両方の入り口と出口を聴き比べよう。最初の版を材料、後の版を不要な付録と決めず、それぞれが一曲としてどこで区切られるかを見ると、アルバム全体の往復する構成もつかみやすくなる。
参考資料 · Tony Allen / Comet — Black Voices official programme and creditsGet Together
約5分55秒の2曲目で、前後を7分以上の曲に挟まれている。単体の短さより、この位置に置かれたことで生まれるまとまりに耳を向けてみよう。冒頭から終わりへの運びを確かめ、そのまま長いBlack Voicesに入ると、曲の大きさの違いが分かりやすい。共同著作のクレジットは、アレン一人が全ての声や楽器を作ったという理解にも歯止めをかける。ただしそれだけでは、この曲の各パートを誰が担当したかまでは断定できない。題名を壮大なメッセージに訳して先回りするより、まずこの曲順の中で何が凝縮されているかを探すのがよい入口になる。
参考資料 · Tony Allen / Comet — Black Voices official programme and credits
次に聴く一枚
『The Source』の曲ごとの共演者と、ここでのプロデューサーや共作者を比べ、他の参加者が中心の奏者の音楽を変える異なる方法を聴きたい。
The Source ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。