レゲエ・ラテン / スカとロックステディ · 1972
The Harder They Come
Various Artists
この一枚を聴く理由
ジミー・クリフの伸びる声、メイタルズの合唱、スコッティの語り。拍だけでなく声の違いからジャマイカ音楽に入れる一枚です。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
最初の「You Can Get It If You Really Want」は、明るい旋律で背中を押すように始まります。その直後の「Draw Your Brakes」では、スコッティが話し声と歌の間を行き来し、同じ聴き方では捉えきれない動きを作ります。メロディアンズの声が重なり、さらにクリフの「Many Rivers To Cross」へ進む頃には、この音楽を一つの気分で説明することの難しさが分かるでしょう。映画を知らなくても、声が交代するたびに耳の向け方を変える楽しみがあります。
ペリー・ヘンゼル監督の1972年のジャマイカ映画に結び付いたサウンドトラックです。クリフは成功を求めてキングストンへ来る歌手アイヴァンを演じますが、収録曲のすべてを歌っているわけではありません。メイタルズ、デズモンド・デッカー、スリッカーズ、メロディアンズ、スコッティも参加しています。案内するApple版は全十二トラック。最後の二つに冒頭曲と表題曲が再登場する構成です。これは後年の追加曲を付けたという意味ではなく、元のプログラムの一部として聴く必要があります。
既存の録音が出会う場所
映画のために同じ演奏者が一度に録音した劇伴ではありません。先に発表されていたジャマイカのレコードが、映像や曲順の中で別の関係を結びます。歌い手ごとに言葉の置き方、息の長さ、周囲の音の厚さが違うのは、その成り立ちとも結び付きます。声が替わるたびに聴こえ方が変わる点を、不揃いとして片付けず、複数の人がそれぞれの場所を持つ編集として受け取ってみてください。
踊れる音の中にある切実さ
「Sweet And Dandy」の活気や「Pressure Drop」の集団的な推進力は、身体を動かす入口になります。一方で「Many Rivers To Cross」のオルガンと長く伸びる歌声は、時間の感じ方を変えます。すべてを南国の気楽な音楽と考えると、こうした差は見えなくなります。都市で生き、音楽の仕事を得ようとする人物という映画の設定だけ知っておけば、希望を語る旋律にも踏みとどまる強さが聞こえるはずです。結末まで知っている必要はありません。
映画の評価と音盤の後世
1972年8月のMonthly Film Bulletinでトニー・レインズは、レゲエの使い方に商業性と抵抗の両面を見ました。これは当時の映画評であり、アルバムへの採点ではありません。後年、米国議会図書館が掲載したマイケル・ガーニスの文章は、国外へ音楽を届けた選曲の役割を強調しています。ただし、ここからジャマイカ音楽が始まったわけではありません。気に入った声を見つけ、その人たちの作品へ進む。現在も使える入口としての魅力は、そこにあります。
曲からたどるアルバム
最初の四曲を歌手名とともに聴き、旋律を歌う声とリズムに言葉を乗せる声を比べてから、全十二トラックへ進んでみてください。
Draw Your Brakes
スコッティは長い旋律を完成させるより、伴奏に割り込み、言葉を投げ、また間を作るように動きます。ここでのDJは選曲者だけでなく、既存の録音にリズミカルな発話を加える役割も指します。本曲はキース&テックスの「Stop That Train」を利用した録音です。後ろの歌と手前のスコッティを分けて追うと、同じ伴奏でも注目の中心が移ることが分かります。全ての表現を訳せなくても、言葉を切る位置や引き伸ばす声から、緊張やユーモアを感じ取れるでしょう。整った旋律の第一曲のあとに置かれることで、アルバムにある歌唱の種類を早くも広げています。
参考資料 · Michael Garnice: soundtrack essay hosted by Library of CongressMany Rivers To Cross
オルガンの上で、クリフが一つの音をどれほど長く保つかに注目してください。前の曲まで伴奏の隙間に感じていた動きが、ここでは声の伸びや強さに移ります。ゴスペルを思わせる響きは、この選集が同じリズムだけで出来ていないことを教えてくれます。声が大きくなる瞬間だけを待たず、その前に息を集める部分と、長く解き放つ部分を比べると変化が具体的です。映画の人物の切実さに重なりますが、彼の伝記だけに歌を閉じ込める必要はありません。一人の声が空間を満たす力を聴いたあと、次の「Sweet And Dandy」の合唱へ進むと、独唱の重みと集団の活気が互いを際立たせます。
参考資料 · Patricia Meschino, GRAMMY.com,2023: song-by-song retrospective and Cliff interview
次に聴く一枚
『The Wailing Wailers』へ進むと、複数の歌手を集めた映画音盤から、一つのボーカル・グループの初期録音へ焦点を絞れます。
The Wailing Wailers ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。
- Apple Music US: original twelve-track soundtrack and individual artist credits · music.apple.com
- Criterion Collection: The Harder They Come, film synopsis and credits · www.criterion.com
- Tony Rayns, Monthly Film Bulletin, August1972; reproduced in BFI2022 programme notes · bfidatadigipres.github.io
- Michael Garnice: soundtrack essay hosted by Library of Congress · www.loc.gov
- Patricia Meschino, GRAMMY.com,2023: song-by-song retrospective and Cliff interview · www.grammy.com