エレクトロニック / アンビエント · 1980
アンビエント2:ザ・プラトウ・オブ・ミラー
ハロルド・バッド/ブライアン・イーノ
Ambient 2: The Plateaux of Mirror · Brian Eno & Harold Budd
この一枚を聴く理由
ピアノの音が鳴る瞬間と消えていく時間。その二つを別々に追うと、静けさの中の動きが見えてきます。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
「First Light」のピアノは、音の始まりでは近く感じられるのに、響きが伸びるにつれて距離が曖昧になります。次の音が入るとき、前の音はもう消えたのでしょうか。その小さな疑問を追うだけでも、このアルバムには十分な入口があります。静かな音楽だから変化が少ないと考えるより、一つの音が周囲と関係を結びながら形を変える作品として聴いてみてください。速い展開を待たなくても、耳の向け方によって前景と背景が入れ替わります。
1980年に発表されたハロルド・バッドとブライアン・イーノの共同作品で、Ambientシリーズの第二作です。米国の作曲家バッドのピアノと、イーノが扱う音響の環境が出会っています。案内しているApple米国版は全十曲で、音源の権利表記は2004年のVirginです。これは作品の発表年とは別の情報です。「First Light」から「Failing Light」へ進む曲順は、日本のユニバーサルが案内する十曲の再発盤でも確認できます。追加曲で構成を延ばした版ではありません。
響きを聴きながら弾く
バッドは1986年のSound On Soundの取材で、加工された響きを聴きながら演奏し、その雰囲気に影響されていたと説明しています。完成済みの独奏をあとから飾るだけの関係とは違います。鍵盤を押す短い動作と、そのあとに残る長い音が、次の判断を変えていきます。装置の名前を覚えなくても、この仕組みは想像できます。一音が広がったあと、次の音をどこに置くか。周囲の響きも演奏の条件として働いているのです。
長さの違いが作る曲順
長い導入のあとには短い「Steal Away」が置かれます。さらに「An Arc of Doves」の広がりと「The Chill Air」の簡潔さを比べると、全体が均質な背景として続くわけではないことが分かります。強いビートの代わりに、曲ごとの滞在時間が区切りを作ります。光や空気を連想させる題名もありますが、それを情景の正解にする必要はありません。高い音と低い音の位置、響きが重なる量など、実際に追えるものを手掛かりにできます。
環境に溶けきらない身振り
別の1986年の取材でバッドは、本作が自然に出来上がったと振り返る一方、後の『The Pearl』により強い統一感を認めています。これは発売当時の批評ではなく、本人の後年の見方です。後世のPitchfork評でも、リアム・シンガーは人の存在感が残る点に注目しました。心地よい背景として流せる音楽の中で、ピアノを弾く人の小さな判断が耳を引く。その両方を行き来できるところに、本作を聴き返す面白さがあります。
曲からたどるアルバム
一度は音の立ち上がりを、次は消え際を追ってください。冒頭の長い曲と二曲目の短さを比べると、曲順の呼吸がつかめます。
First Light
次の旋律を予想する前に、一つの音がどこで消えるかを探してみましょう。新しい音の下に前の響きが残っていれば、音と音の間も空白ではありません。はっきりした拍子を頼りにしなくても、その重なりが動きを作ります。高音の光る部分を追ったあと、下に残る音へ注意を移すと、同じ場面の距離感が変わって聞こえるでしょう。題名から朝の景色を思い浮かべても構いませんが、明るさを感じる理由を音域や間隔から探すと、感想が具体的になります。短い試聴では質感を、全曲では待つ時間を確かめてください。続く「Steal Away」の短さも、この長い入口を聴いたあとでは一つの変化になります。
参考資料 · Apple Music US: Ambient 2, ten tracks, ℗2004 VirginThe Plateaux of Mirror
鍵盤の音だと分かる立ち上がりと、そのあと輪郭を緩めながら広がる部分を分けて聴いてみてください。楽器は身近なのに、置かれた空間を簡単には思い描けない。そのずれが響きを単なる飾り以上のものにします。ドラムの拍を頭の中で補うより、音の間隔と、明るい音が柔らかな背景に触れる様子を追う方が入口になります。鏡という題名は想像を促しますが、特定の場所を記録した作品と断定はできません。聴き終えたら「First Light」に戻り、鍵盤の表面と周囲の音のどちらが前に感じられるかを比較してみましょう。似た静けさの曲でも、注意を向ける場所によって違いを探せます。
参考資料 · Apple Music US: Ambient 2, ten tracks, ℗2004 Virgin
次に聴く一枚
『Music for Airports』へ。繰り返す音の配置が作る空間と、本作のピアニストの身振りが感じられる空間を比較できます。
Ambient 1: Music for Airports ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。
- Brian Eno official discography: Ambient 2, Harold Budd / Brian Eno, 1980 · www.brian-eno.net
- Mark Prendergast, Sound On Sound, December 1986: Harold Budd interview · www.muzines.co.uk
- Electronics & Music Maker, July 1986: The Serpent and the Pearl, Budd interview · www.muzines.co.uk
- Universal Music Japan: UICY-25470, 2015 ten-track reissue and Japanese titles · www.universal-music.co.jp
- Apple Music US: Ambient 2, ten tracks, ℗2004 Virgin · music.apple.com
- Liam Singer, Pitchfork: retrospective review of Eno ambient albums · pitchfork.com