フォーク・カントリー / フォーク・リヴァイヴァル · 1960
Joan Baez
Joan Baez
この一枚を聴く理由
動き続けるギターと、語尾を空中にとどめる歌。その時間差に物語が生まれる。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
「Silver Dagger」ではギターが先へ進む間に、ジョーン・バエズの声が一つのフレーズを長く保つ。この二つの動きの違いから聴き始めたい。高音の美しさはすぐに分かるが、声の強弱が語り手との距離をどう変えるかに耳を向けると、古い歌が目の前の言葉になる。音数の少なさは、表現できる感情の少なさではない。
1960年に発表された最初のヴァンガードのソロ・アルバム。ただし、初めて録音に参加した作品ではなく、公式年譜には1959年のFolksingers ’Round Harvard Squareが先に載る。ここで中心にあるのは、すでに舞台で親しんだ歌を自分の表現にする仕事である。後の政治的な象徴としての姿やボブ・ディランとの関係からだけ聴くと、別の人物の物語を引き受ける若い歌い手の選択を見落としかねない。
歌い方そのものが編曲になる
声とギターを中心にした音の中では、語尾を少し長く保つだけでも景色が変わる。まず伴奏の規則的な動きを追い、次に歌がその歩調から離れるところを探してみよう。大きな楽器の変化を待たずに聴けば、発音や息の長さが展開を作っていると気づく。旋律の運びを楽しめる「Wildwood Flower」と、長い物語をたどる「Mary Hamilton」は同じ速さで受け止めなくてよい。短い歌と長い叙事の交替が、十三曲の時間に幅を与えている。歌と伴奏を別々に追うと、その差がよく分かる。
すでに身についた歌を持ち込む
2020年の米国議会図書館のインタビューで、バエズはニューヨークの空いた舞踏室で四日間かけて録音したと回想した。また、コーヒーハウスで歌ってきた曲を持ち込んだと説明している。これは後年の記憶であり、当時の録音日誌とは区別したい。それでも、自作の新曲でなければ個人的な表現にならない、という考えをほどく手がかりになる。受け継がれた歌のどこに重みを置き、誰の言葉として届けるか。その判断が一枚を彼女の作品にしている。
追加曲の前に十三曲を聴く
リック・マシモの後年の論考には、当時の批評家ロバート・シェルトンによる好意的な評価が紹介されている。その初期の反応と、後の録音保存の対象としての選定は分けて考えたい。ここでは最初の十三曲の並びを扱い、十六曲のボーナス版とは混同しない。英語の歌が続いた後、スペイン語の最終曲へ進む流れも残して聴こう。言葉をすべて訳せなくても、同じ声が別の発音や文章の長さに出会う変化は感じ取れる。選曲の幅を、単なる名曲集の便利さに置き換えないことが大切だ。
曲からたどるアルバム
ギターの一定の動きをつかみ、その上で歌の語尾がどれだけ長く残るかを追いたい。
Silver Dagger
最初の曲は、明瞭なギターと長く伸びる声を同時に追える入口である。歌声が明るく美しいからといって、愛を拒む登場人物の言葉まで楽観的になるわけではない。まず一つの文が終わる位置を聴き、伴奏がその間も進んでいることを確かめよう。次の節では、同じ旋律に乗った別の言葉が、前の節の意味をどう変えるかに注目したい。大きな編曲の変化がなくても物語は先へ進む。これをバエズ自身の恋愛告白と決めつけず、伝えられた人物の声を引き受ける演奏として聴けば、後に続く異なる視点の歌も受け止めやすい。声の魅力と語られる事情を、いったん分けて考えてみたい。
参考資料 · Apple Music: thirteen-track editionMary Hamilton
バエズは2020年のインタビューで、この曲を一回のテイクで録音したと振り返っている。それを完璧さの証明とするより、長い物語を一つの流れとして運ぶ感覚に注目したい。大きな楽器の交替がない中で、文の終わりに声が引くのか、それとも空間に残るのかを追ってみよう。英語をすべて聴き取れなくても、繰り返すギターに対して歌の息が続く長さは比較できる。その後で物語の輪郭を知って戻れば、同じ旋律の中で言葉が変わる意味も深まる。悲劇的な出来事を刺激的に説明するための曲としてではなく、伝える声がどれだけ抑制を保つかを聴く長いバラッドである。
参考資料 · Library of Congress: Joan Baez interview, 4 August 2020
次に聴く一枚
ピート・シーガーのカーネギー・ホール公演へ。一人で物語を担う歌と、聴衆へ歌を手渡す舞台の違いを比べたい。
We Shall Overcome: The Complete Carnegie Hall Concert ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。
- Joan Baez: official biography and 1960 chronology · www.joanbaez.com
- Library of Congress: Joan Baez interview, 4 August 2020 · www.loc.gov
- Rick Massimo: National Recording Registry essay · www.loc.gov
- Craft Recordings: original stereo programme reissue · craftrecordings.com
- Apple Music: thirteen-track edition · music.apple.com