ジャズ / モード・ジャズ · 1965
Maiden Voyage
ハービー・ハンコック
Maiden Voyage · Herbie Hancock
この一枚を聴く理由
海のイメージが五曲を結びつけるが、各曲の構造や役割は一様ではない。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
この海は、いつも静かとは限らない。表題曲が広い空間を開くと、次のThe Eye of the Hurricaneが別の運動を示す。後半にはSurvival of the Fittestがあり、最後はDolphin Danceで結ばれる。五曲を一つの景色としてまとめながら、同じ速さや同じ和声に統一しないところが面白い。曲名は入口を与えるが、実際に航路を決めるのは、曲ごとに異なる書法と演奏の配分である。
録音は1965年3月17日、ニュージャージーのヴァン・ゲルダー・スタジオ。五曲すべてがハンコックの作品だ。ピアノの本人に、フレディ・ハバードのトランペット、ジョージ・コールマンのテナー、ロン・カーターのベース、トニー・ウィリアムスのドラムが加わる。マイルス・デイヴィスの周辺にいた奏者が多いが、この盤のトランペットはデイヴィスではない。二本の管と三つのリズム楽器の関係を、ハンコックが曲ごとに設計する。
表題曲の特徴を全曲に当てはめない
表題曲の和音には、すぐに結論へ閉じず、次の音のための余地を残すような感覚がある。しかしアルバム全体を、和音がほとんど動かない音楽と考えるわけにはいかない。The Eye of the Hurricaneはブルースの枠を使い、Dolphin Danceは別の和声の道筋を持つ。海という題材は、曲の作り方まで一つにする規則ではない。異なる方法を同じ編成が演奏することが、一枚の幅を生んでいる。最初の曲だけを全体の見本にせず、曲が変わるたびに役割の違いを確かめたい。
三曲目が持つ別の背景
中央のLittle Oneは、同じ年にデイヴィスのE.S.P.でも演奏されたハンコック作品である。直接海を指さない題名でも、このアルバムの中で位置を得る。すべての曲が同じ場面を説明しなければならないわけではない。曲は前後に何を置くかによって、別の役割を持つ。ここでは二曲目の活動的な流れと、四曲目の長い展開の間にあり、題名だけでは表せないつながりを作る。
最長の曲の先に結末がある
この配信で最も長いのは、約十分六秒のSurvival of the Fittest。それでも一枚はそこで終わらず、約九分十九秒のDolphin Danceが続く。最後の曲は短い付け足しではなく、それ自体が十分な規模を持つ結びだ。ハンコックは独奏するときだけでなく、他の奏者の場所や曲順を決めるときにも中心にいる。五つの演奏を並べて聴くと、名演を一曲ずつ選ぶ聴き方とは異なる全体像が現れる。
曲からたどるアルバム
表題曲からHurricaneへ進み、さらに最後の二曲の順番が全体の印象をどう変えるかを聴きたい。
Maiden Voyage
ピアノの繰り返す和音の模様に、二本の管の旋律が乗る。船の姿を想像してもよいが、風景を知らなくてもその仕組みは聴き取れる。和音がすぐに閉じない感覚と、旋律の明瞭な輪郭が共にあるからだ。公式解説にあるサスペンデッド・コードという言葉を先に覚えるより、次の音が入る余地を残す伴奏として聴いてもよい。カーターとウィリアムスの働きも含めると、静けさは演奏が止まっていることとは違う。選んだのは元の五人による約七分五十五秒の演奏の2012年リマスター。同名の後年の独奏などと区別し、ピアノの模様と前面の音の変化を比べたい。
参考資料 · Herbie Hancock official discography — original programme, personnel, session date and reprinted notesDolphin Dance
最後の曲は表題曲の和声をそのまま再現しない。同じ五人の編成を保ちながら、別の道筋を用意する。約九分十九秒という長さも、最長曲の後の短い余韻にとどまらない。ピアノを独奏楽器としてだけ聴くと、別の奏者が前に出たときのハンコックの仕事が見えにくい。旋律の記憶を保ち、即興のための場所を作る伴奏も作品の一部だ。この曲から好きになったなら、次はSurvival of the Fittestから続けて聴いてみたい。前の長い演奏が記憶に残ることで、踊りを名に持つこの曲が結末を引き受ける意味も変わって聞こえる。曲順も作品を聴く手がかりになる。
参考資料 · Herbie Hancock official discography — original programme, personnel, session date and reprinted notes
次に聴く一枚
Speak No Evilでもハバード、ハンコック、カーターが参加する。テナーとドラムの奏者が変わる五楽器の編成で、別の作曲者がどう違う空気を作るかを比べたい。
Speak No Evil ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。
- Herbie Hancock official discography — original programme, personnel, session date and reprinted notes · www.herbiehancock.com
- Blue Note — Herbie Hancock artist discography · www.bluenote.com
- Qobuz / Blue Note — 2012 remaster, matching five-track delivery · www.qobuz.com
- Apple Music — five-track 2012 rights-bearing remaster · music.apple.com
- Qobuz — alternative 2012 remaster product with different timing · www.qobuz.com