ソウル / R&B / モータウン · 1972
All Directions
The Temptations
この一枚を聴く理由
長い伴奏の緊張と短い歌の親密さを、複数の声が違う形で満たす。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
ベースが戻り、周囲へ音が加わっても、歌はすぐに始まらない。『All Directions』のPapa Was a Rollin’ Stoneは待つ時間を音楽の一部にする。しかし、その長い曲だけでこの音盤を覚えると、後に来る声の温かさを取り逃がす。暗く広がる空間と短く近い歌が、同じ八曲の中に置かれている。
1972年のテンプテーションズは、デニス・エドワーズ、リチャード・ストリート、デイモン・ハリス、オーティス・ウィリアムズ、メルヴィン・フランクリンの五人。ノーマン・ホイットフィールドとの仕事で、長い伴奏のドラマと歌唱グループの色が出会う。選定した通常版は約36分で、三曲目のPapaが約12分を占める。有名なシングルの記憶だけで全体を思い描かず、その前の二曲と後の五曲も順番に聴いてみたい。
反復の中で耳が変わる
長い導入では、大きな変化が絶えず起こらないと集中できない、という期待を少し脇へ置こう。ベースの形が戻る間、高い音と低い音が占める場所は変わって感じられる。声が入る頃には、伴奏が用意した空間の広さをすでに知っている。一度は一つの反復をつかみ、次にはその周囲で新しく耳に入る音を追う。単に長いことより、待つ間に注意の置き方がどう変わるかが面白い。
五人の声という楽器
この時期の音を、以前の有名な顔ぶれのままで想像しないようにしたい。ストリートとハリスが加わった後のグループである。粗い主唱と柔らかな和声の接点を聴くと、制作側の大きな設計の中にも声の役割が見える。一人が句を渡すときと、複数の声が集まるときの距離を比べてみよう。ホイットフィールドの器楽作品のようにだけ説明すると、声が場面の感情を変える力までは捉えにくい。誰がどの句を歌うかを最初からすべて当てる必要はない。同じ言葉でも声の厚さや高さが変わると、聞き手へ向ける態度まで動く。その小さな変化を一つずつ覚えていこう。
長い曲の後で縮まる時間
Love Woke Me Up This Morningへ進むと、時間の大きさが急に変わる。続くI Ain’t Got Nothin’やThe First Time Ever I Saw Your Faceでも、旋律と和声が作る近い空間へ耳を向けられる。代表曲の周囲に残った余白として扱うのは惜しい。最後のDo Your Thingまで聴けば、緊張と愛情、リズムの快感が一方向にまとまらない音盤と分かる。題名は制作意図を断定する証拠より、こうした差を聴く手がかりにしたい。
曲からたどるアルバム
Papaの長い始まりを飛ばさず、直後のLove Woke Me Up This Morningまで続けて時間の感覚を比べよう。
Papa Was a Rollin' Stone
最初の歌詞を待つだけでなく、その前の反復から一曲として聴きたい。ベースが同じ場所へ戻っても周りの音で空間は違って感じられる。モータウンの記録によれば、1972年に先に発表したのはアンディスピューテッド・トゥルースで、テンプテーションズは後に録音した。ここでは約12分のアルバム版を聴く。声が入っても導入の緊張が消えるとは限らない。不在の父への問いを複数の声が渡す構造は、一人の告白とは異なる距離を作る。歌手の家族史とすぐ結びつけず、低い反復とその上の文末を交互に追ってみよう。長さが発言の場所を準備していることが感じられる。
参考資料 · Classic Motown: Undisputed Truth and the first Papa recordingLove Woke Me Up This Morning
長いPapaの後に置かれる約二分半の歌は、音盤の時間を小さく畳み直す。大きな伴奏が声を待たせた前曲と違い、旋律と和声の親密さから耳を置ける。選定した八曲版では四曲目であり、短さは元の順番の中でこそ際立つ。まず主唱の句を、次には後ろの声が入って感情の大きさを変える瞬間を追おう。代表曲より短いことは、重要でないことを意味しない。緊張を持続させる仕事と近くへ語りかける仕事は、それぞれ別の力を要する。そのままI Ain’t Got Nothin’へ進めば、この親密さが休憩ではなく後半への道になる、という聴き方もできる。
参考資料 · Apple Music US: eight-track album with twelve-minute Papa
次に聴く一枚
『Cloud Nine』と続けて聴き、同じ制作側とグループの関係が、違う長さや空間へ展開する様子を比べたい。
Cloud Nine ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。
- Classic Motown: All Directions-era quintet and Norman Whitfield production · classic.motown.com
- Classic Motown: Undisputed Truth and the first Papa recording · classic.motown.com
- Classic Motown: Whitfield and Barrett Strong songwriting partnership · classic.motown.com
- Apple Music US: eight-track album with twelve-minute Papa · music.apple.com