ソウル / R&B / シンガーソングライター・ソウル · 1973
レッツ・ゲット・イット・オン
マーヴィン・ゲイ
Let's Get It On · Marvin Gaye
この一枚を聴く理由
近くへ誘う歌と遠い相手を呼ぶ歌が、重なる声の中で異なる親密さを作る。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
『Let’s Get It On』の最初の曲は近くへ来るよう呼びかけるが、全曲が同じ方向へ動くわけではない。「Distant Lover」では距離が広がり、最後の「Just to Keep You Satisfied」は入口と違う感情を残す。八曲の短い構成の中で、声が近づき、ためらい、考え直す違いを追える。
1973年発表の本作は、エド・タウンゼントと共同で作った曲を前半にまとめる。後半には以前のデトロイト録音から始まった素材もあり、一度の連続したセッションだけで完成したわけではない。『What’s Going On』との比較は有効だが、その間には『Trouble Man』もあった。社会から恋愛へ突然転向したと整理するより、複数の時期の作業を八曲に組み立てた選択を考えたい。曲の親密さと制作の単純さは同じ意味ではない。
最初の呼びかけが戻る
表題曲から「Please Don’t Stay」「If I Should Die Tonight」を経て、第四曲「Keep Gettin’ It On」が最初の提案を再び呼ぶ。元の第一面の終わりで入口を振り返る構造だ。題名が似ていても、単に冒頭を複製した追加曲ではない。途中の二曲があることで、戻ってきた言葉の位置も変わる。第一曲だけを代表曲として切り離していたなら、四曲を続けて聴いてみたい。馴染みの歌がアルバムの中で結ぶ関係が分かる。
一つの声の複数の場所
アート・スチュワートは表題曲を扱う取材で、ドラムを三トラックに置き、録音しながらバランスを取る自身の方法を説明している。その空間に主唱と背景の声が置かれる。前の声だけを追えば一人が直接話しているようでも、和声を含めて聴くと周囲から応答が生まれる。この証言を全曲に共通する技法へ広げる必要はない。表題曲で主唱の句が通過した後、何が残るかを聴くための具体的な手掛かりになる。
短い再会の後の距離
第五曲「Come Get To This」は約二分四十二秒で、この版では最も短い。続く「Distant Lover」は約四分十七秒と長く留まる。二曲を隣に置くことで、後半は一つの気分を同じ大きさで続ける区間ではなくなる。「You Sure Love To Ball」を経て終曲へ届くと、親密さという主題の中にも期待と不在、満足と振り返りが違う場所を持つ。最初の有名な句で全体を決めず、短い第五曲から長い第六曲へ移るところをもう一度聴きたい。結末から入口へ戻れば、同じ誘いも別の重さを帯びる。
曲からたどるアルバム
第一曲から第四曲の回帰を追い、「Come Get To This」と「Distant Lover」の時間と距離を比べる。
Let’s Get It On
ゲイとエド・タウンゼントによる冒頭曲を、約四分五十四秒のアルバム版で選ぶ。短いシングル編集や後年のリミックスではない。主唱の句の後には、後ろの声がどこから入るかを聴こう。親密さは一人を前に立てるだけでは作られない。スチュワートはドラムを三トラックに分け、録音中に均衡を整える自身の具体的な方法を説明した。個々の楽器を全て特定の奏者に割り当てるより、主唱と応答の関係から入るとよい。選定は2003年リマスターで、Qobuz比較版との約1.8秒差を明示した。第四曲まで続けると、入口の提案が戻る役割も分かる。
参考資料 · Mix: Art Stewart and Harry Weinger on the title-track recordingDistant Lover
第六曲は約四分十七秒のスタジオ録音であり、後年の有名な実演には置き換えていない。作者はゲイ、グウェン・ゴーディ・フークア、サンドラ・グリーンで、前半のタウンゼントとの共同作業とは異なる。直前の短い「Come Get To This」から移ると、一つの場面に留まる時間が広がる。入口の近い誘いに対し、題名から遠くの相手へ呼びかける位置が示される。句の間の待ち時間と、後ろの声が満たす場所を聴けば、同じ歌手の別の親密さが分かる。歌詞を全て実在人物の伝記へ解読しなくても、この距離の差は追える。二曲の組み合わせは、声が相手を呼ぶ場所の違いを確かめるためだ。
参考資料 · Qobuz / Motown: eight-track programme and credits
次に聴く一枚
『What’s Going On』へ戻り、重なる声が個人への訴えと社会への問いにどう違って使われるかを比較したい。
What's Going On ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。
- Motown/UMe: original programme, session history and 2023 edition distinctions · www.universalmusic.ca
- Mix: Art Stewart and Harry Weinger on the title-track recording · www.mixonline.com
- Qobuz / Motown: eight-track programme and credits · www.qobuz.com
- Apple / Motown: explicit 2003 remaster delivery · music.apple.com
- Apple / Motown: unedited third track and separate original LP edit · music.apple.com