クラシック / バロック · 1936–39
バッハ:無伴奏チェロ組曲
パブロ・カザルス
바흐: 무반주 첼로 모음곡 · 파블로 카잘스
この一枚を聴く理由
一台のチェロが低音と旋律を行き来する。音の数よりも、句が向かう先と息継ぎを追いたい演奏。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
低い音を弾いた後でチェロが上へ動くと、消えた低音がまだ下で支えているように感じられる。カザルスのバッハでは、その記憶の重なりに加えて、句をどこへ運ぶかという呼吸が重要だ。古い名盤という肩書を先に置かず、音の重さがどこへ移り、どこで緩むのかを聴いてみよう。
作品は18世紀のバッハによる六つの無伴奏組曲で、ここで聴くのはカザルスの1936~1939年の録音である。第2・3番は1936年、第1・6番は1938年、第4・5番は1939年に録音された。最初から現代の一組のアルバムとして出たわけではなく、78回転盤を経て全曲をまとめる再発へつながった。接続するEMI配信版は全36楽章を収録。2010年の発売表示と2012年の編集著作権表示は、演奏が行われた年とは区別する。
伴奏がなくても複数の役割がある
無伴奏とは他の楽器がいないことであって、旋律しか存在しないということではない。低音、上へ動く線、複数の弦を響かせる和音が、一台の中で異なる役割を担う。カザルスは句の行き先へ重みを移し、拍の進み方にも柔軟さを与える。同じ形の音型が現れても、すべてを同じ強さと長さでそろえるわけではない。現代の演奏との正誤比較より、何を目指して弾いているように聞こえるかを考えると、その選択が具体的になる。
有名な前奏曲の先へ
第1番の前奏曲だけで終えると、六つの組曲が持つ性格の違いを逃しやすい。各組曲では前奏曲に続いてアルマンド、クーラント、サラバンドなど、舞曲に由来する楽章が並ぶ。実際の踊りを再現する音楽ではなくても、重みを置いて離す拍子の感覚は残る。一組ずつ聴き、速い曲と遅い曲で体が動きたくなる場所を比べたい。第5番のサラバンドのように音が少ない部分では、音が消えた後の時間も、前の音の意味を変えていく。 六曲を一度に聴き通すより、今日は一つの組曲を選び、その中の歩み方の変化を確かめるのもよい。同じ楽器だけで続くことが、かえって違いを見つける助けになる。
発見の伝説と演奏の価値
カザルスが完全に忘れられた曲を一人で発見した、という説明は単純すぎる。米国議会図書館は19世紀にもチェリストたちが組曲を知っていたことを指摘し、彼の貢献を演奏によって音楽的価値を示した点に見る。発売直後の具体的な批評は今回確認できていない。後年の2010年にはRalph Mooreが再発を評して解釈と録音の古さを併せて論じ、2018年には米国のNational Recording Registryに選ばれた。その評価を答えにせず、まず弓が作る強調と間を探したい。
曲からたどるアルバム
第1番の前奏曲から舞曲へ進み、第5番サラバンドと比較。強調点と間の位置に注目する。
Cello Suite No. 1 in G Major, BWV 1007: I. Prélude
低い音から広がる動きが、一台のチェロに土台と旋律の両方を感じさせる。まず低音が戻る場所を見つけ、次にはその間の線がどこまで伸びるかを追ってみよう。カザルスは反復を同じ形のまま並べず、音の重さを変えて句に方向を与える。接続盤の冒頭に置かれた1938年録音で、次のアルマンドまで続けると、自由に広がる始まりと舞曲の歩みの差が分かる。表面の雑音を消そうとすることだけに気を取られず、演奏がどこへ向かうかへ耳を集めたい。有名な旋律を知っていても、同じ音型が毎回どんな目的地を得るかは、新しく聴き直せる。呼吸のようにその流れをたどると入りやすい。
参考資料 · Warner Music Japan: original session dates and complete suite listingCello Suite No. 5 in C Minor, BWV 1011: IV. Sarabande
第1番前奏曲の密な動きに比べ、この楽章では少ない音が大きな時間を占める。一音をどれほど保ち、次の音がその記憶をどう変えるかを聴いてみよう。1939年録音で、接続盤では28曲目に当たる。一度目は旋律を追い、二度目には音と音の間へ注意を移すとよい。サラバンドは舞曲に由来するが、速い足取りを想像する必要はない。遅い拍子の重みがどこに置かれるかを探すと、静止しているような音楽にも動きがあると分かる。前後の楽章と続けて聴けば、この抑えた箇所が組曲の中で開く空間もはっきりする。孤立した厳粛な小品としてだけ聴かないことが手掛かりになる。
参考資料 · Warner Music Japan: original session dates and complete suite listing
次に聴く一枚
Trevor PinnockのVivaldi L’estro armonicoとつなげ、独奏と合奏が拍子と対話を作る違いを聴く。
Vivaldi: L'estro armonico Op. 3 ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。
- Warner Music Japan: original session dates and complete suite listing · wmg.jp
- Apple Music: EMI36-track digital compilation · music.apple.com
- Library of Congress: Casals Bach Suites registry essay,2018 selection · loc.gov
- Library of Congress: descriptions and historical qualification of rediscovery myth · www.loc.gov
- Pristine Classical:1936–1939 sessions and original78rpm issues · www.pristineclassical.com
- Ralph Moore, MusicWeb May2010: EMI reissue review · musicweb-international.com