GROOVE ARCHIVE
← レゲエ・ラテン
Caetano Veloso

レゲエ・ラテン / ラテンアメリカ · 1968

Caetano Veloso

Caetano Veloso

この一枚を聴く理由

短いポップソングと長い物語が交差し、十二曲で次々に舞台を替える。

音楽と一緒に読む

収録曲・試聴

日本語編集版

アルバムの物語

この一枚の面白さは、大きな身振りの曲だけにない。五分を超えるClariceのあとに、一分半にも満たないSuperbacanaが待っている。カエターノ・ヴェローゾの声を囲む場面は、曲の長さも編曲の厚みも変えながら、落ち着く場所を一つに決めずに進む。

対象はTropicáliaで始まりElesで終わる、1968年の十二曲のアルバム。同名の作品が複数あるため年の区別が大切だ。ガル・コスタとのDomingoを経た歌手が、ここでは管弦楽の広がりや簡潔なポップの形を並べている。冒頭の強い印象を保ったまま全曲を押し切るのではなく、曲ごとに違う大きさの器を用意する。その切り替えが一枚の魅力になっている。

編曲の顔ぶれ

2020年のインタビューでヴェローゾは、このアルバムを制作していた時期の編曲家としてジュリオ・メダーリャとダミアーノ・コッツェラを挙げている。運動の名前だけで関係する音楽家を一括りにするより、この組み合わせに注目したい。歌を豊かに包む響きと、短い旋律を軽く送り出す形が同居する。編曲を単なる飾りとして聞くのではなく、歌い手の立つ舞台そのものが替わると考えると、曲間の対照が身近になる。

長さを揃えない曲順

二曲目のClariceには約五分三十二秒が与えられ、その後は短い曲が多く続く。Superbacanaは約一分二十九秒という小さな枠に収まるが、その短さだけが一枚の尺度ではない。Paisagem Útil、Claraを通ってSoy Loco Por Ti Americaへ進み、Ave-Mariaのあとには約四分四十二秒のElesが置かれる。最後に再び広い時間を確保することで、中盤の素早い場面転換にも落ち着き先が生まれる。曲を選び出すだけでなく、この伸縮を追う楽しみがある。 次の曲へ移る瞬間にも、その大小の差は現れる。

離れた場所にある共作

No Dia Que Eu Vim-Me EmboraとElesはジルベルト・ジルとの共作で、アルバムの前方と最後に離れて配置されている。共同作業の曲を一か所にまとめず、異なる景色のなかに置く構成だ。初めは鮮やかな対照に耳を奪われても、次には旋律の親しみやすさがどの場面にも残ることに気づけるだろう。短い歌を小さな付録にせず、長い歌だけを中心にもしない。声の親密さと舞台の大きさが別々に動くところに、この作品を通して聴く面白さがある。歌の形を捨て去るのでなく、そこへ入れられる景色を増やしていくアルバムとして接してみたい。

曲からたどるアルバム

ClariceとSuperbacanaの長さの対照を確かめ、最後のElesまで続けて聴く。

  1. Tropicália

    歌手の周囲に舞台が組み上がるような、一枚の入口となる曲。幾つもの像が続く作りは、題名を単なる音楽ジャンルより広いものに感じさせる。公認再発レーベルも、食い違うブラジルの姿を集めた曲として紹介している。ここでつながる音源は約三分四十五秒の公式リミックスで、原ミックスと同じ楽器の均衡を前提にはしない。声が中心を保つ一方、その周りの場面の大きさがどう変わるかを追ってみよう。そのままClariceへ進むと、外へ向けた宣言の力が長い物語の時間へ切り替わる。冒頭は後続の曲を一色に塗るためというより、さまざまな歌の入り込む場所を開いているように聞こえる。

    参考資料 · Third Man Records — authorized 1968 album reissue and twelve-track programme
  2. Alegria, Alegria

    四曲目に置かれた、短い言葉を前へ送り出す力のある歌。ヴェローゾは後年、1967年の音楽祭でビート・ボーイズと歌ったことを回想している。ただし、ここで聴くのはその公演録音ではなく、スタジオ作品の公式リミックス版で、長さは約二分五十秒。一本の筋書きを探すより、短い句の交代と、それをまとめるリフレインの関係に耳を向けたい。前のNo Dia Que Eu Vim-Me Embora、次のOnde Andarásと続けると、この曲が一枚に明るい通路を作ることも分かる。単独の有名曲としての軽快さに加え、隣り合う歌との歩幅の違いが、その簡潔な長さを生かしている。

    参考資料 · Instituto Gilberto Gil — Caetano Veloso interviewed by Chris Fuscaldo, May 2020

次に聴く一枚

続いてジルベルト・ジルの同名アルバムへ。同じ時期の協働が、別の歌い手と編曲のなかでどう展開するかを比べられる。

Gilberto Gil ↗
参考資料と編集について

日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。